年金払い退職給付
1 年金払い退職給付の種類と給付の通則
(1)年金払い退職給付の種類
年金払い退職給付には、以下の3種類があります。
- ア 退職年金
- イ 公務障害年金
- ウ 公務遺族年金
(2)退職年金の種類
退職年金は、支給期間を終身とする「終身退職年金」と、支給期間を有期とする「有期退職年金」に分かれます。有期退職年金には、以下のような支給方法があります。
- ア 20年有期とするもの
- イ 10年有期とするもの
- ウ 有期退職年金に代わり、一時金として受けるもの
- エ 整理退職時に一時金として受けるもの
- オ 有期年金を受け取り終わる前に元組合員が死亡した場合に、遺族に対し一時金を支給するもの
(3)併給の調整
年金払い退職給付においても、原則として複数の年金を受ける権利が生じた場合は、一方の年金のみを受給することとなります。支給停止の概要は、以下の表のとおりです。
停止される年金 | 停止すべき事由 |
---|---|
退職年金 | 公務障害年金を受けることができるとき |
公務障害年金 | 退職年金又は公務遺族年金を受けることができるとき |
公務遺族年金 | 公務障害年金を受けることができるとき |
この選択の変更は、いつでも、将来に向かって行うことができます。
(4)給付の制限
ア 組合員等の故意の犯罪行為等による給付制限
組合員やその遺族が、故意の犯罪行為または故意の事故等により給付を発生させた場合には、その者には公務障害年金や公務遺族年金の給付は行いません。
また、受給権者が正当な理由がなく療養の指示に従わなかったことにより事故を生じさせたり、その回復を妨げたりした場合や、診断を受けなかった場合は、その者に対する給付の一部または全部を停止することができます。
イ 禁固以上の刑に処せられたとき等の給付制限
組合員や組合員であった者が、以下に該当するときは、退職年金(終身退職年金のみ)、公務障害年金または公務遺族年金の全部又は一部を支給しないことができます。
このときの給付制限は、給付の制限を開始すべき月から60月間行われます。
(ア) 組合員又は組合員であった者が禁固以上の刑に処せられたとき
支給停止額=年金額×100分の100(※)
(イ) 組合員が懲戒免職処分を受けたとき
支給停止額=年金額×引き続く組合員期間月数/年金額の基礎となった組合員期間月数×100分の100(※)
(ウ) 組合員が懲戒による停職の処分を受けたとき
支給停止額=年金額×停職期間の日数/365日×100分の50(※)
(エ) 組合員が退職手当支給制限等処分に相当する処分を受けたとき
支給停止額=年金額×引き続く組合員期間月数/年金額の基礎となった組合員期間月数×100分の100(※)
(※) それぞれ公務障害年金の場合は、当該率の1/2の率となります。
(オ) 退職年金または公務障害年金の受給者が禁固以上の刑に処せられて、その刑の執行を受けるとき
支給停止額=年金額(※)×100分の100
(※) (ア)~(エ)の場合と異なり、有期退職年金を含みます。
(カ) 公務遺族年金の受給権者が禁固以上の刑に処せられたとき
支給停止額=年金額×100分の50
2 退職年金
(1)退職年金の受給資格
退職年金は、1年以上の引き続く組合員期間を有する者が、退職した後に65歳に達したとき、又は65歳に達した日以後に退職したときに支給されます。
また、退職年金の受給権者であって退職年金を請求していない人は、75歳に達する日の前日までに、支給の繰下げの申出をすることができるほか、1年以上の引き続く組合員期間を有し、かつ、退職している者であって、60歳以上65歳未満の人は、支給の繰上げを請求することができます。
(2)終身退職年金
ア 終身退職年金の額
終身退職年金の額は、終身退職年金の額の算定の基礎となるべき額(終身退職年金算定基礎額といいます。)を受給権者の年齢に応じた終身年金現価率で除した額となります。
イ 終身退職年金算定基礎額
終身退職年金算定基礎額は、終身退職年金の受給権が発生した日からその年の9月30日までの間は、給付算定基礎額(※1)の1/2(組合員期間が10年未満の方は1/4)となります。
※1 給付算定基礎額とは、組合員であった間の掛金の額に利子を加えた額の総額をいいます。
また、終身退職年金の給付事由が生じた日の属する年以後の各年の10月1日から翌年の9月30日までの間における終身退職年金算定基礎額は、各年の9月30日における終身退職年金額に、受給権者の年齢に1を加えた年齢の終身年金現価率を乗じた額となります。
ウ 終身年金現価率
終身年金現価率は、基準利率、死亡率の状況及びその見通しなどを勘案して終身にわたり一定額の年金額を支給することとした場合の年金額を計算する率として、毎年9月30日までに地方公務員共済組合連合会の定款で定められ、各年の10月から翌年9月までの期間に適用されます。
終身年金現価率については、地方公務員共済組合連合会のホームページ(年金払い退職給付制度)を参照してください。
(3)有期退職年金
ア 有期退職年金の額
有期退職年金の額は、有期退職年金の額の算定の基礎となるべき額(有期退職年金算定基礎額といいます。)を支給残月数(※)に応じた有期年金現価率で除した金額となります。
※ 支給残月数は、有期退職年金の給付事由が生じた日からその日の属する年の9月30日までの間は240月、それ以降は、240月から受給権が発生した日の属する月の翌月から各年の9月までの月数を控除した月数をいいます(10年の有期退職年金を選択した人は、240月ではなく120月となります)。
イ 有期退職年金算定基礎額
有期退職年金算定基礎額は、有期退職年金の受給権が発生した日からその年の9月30日までの間は、給付算定基礎額の1/2(組合員期間が10年未満の方は1/4)となります。
また、有期退職年金の給付事由が生じた日の属する年以後の各年の10月1日から翌年の9月30日までの間における有期退職年金算定基礎額は、各年の9月30日における有期退職年金額に、その年の10月1日における当該有期退職年金の支給残月数(※)に対してその年の9月30日に適用される有期年金現価率を乗じた額となります。
ウ 有期年金現価率
有期年金現価率は、基準利率その他政令で定める事情を勘案して支給残月数の期間において一定額の年金額を支給することとした場合の年金額を計算する率として、毎年9月30日までに地方公務員共済組合連合会の定款で定められ、各年の10月から翌年9月までの期間に適用されます。
有期年金現価率については、地方公務員共済組合連合会のホームページ(年金払い退職給付制度)を参照してください。
(4)有期退職年金に代わる一時金
退職年金の請求時に、有期退職年金部分を年金ではなく一時金として受け取ることもできます。
この有期退職年金に代わる一時金の額は、有期退職年金算定基礎額に相当する金額となります。
(5)整理退職の場合の一時金
定員の改廃等により、いわゆる整理退職した場合は、退職年金のうち有期退職年金部分を、65歳未満であっても一時金として前倒しで受給することができます。
この整理退職の場合の一時金の額は、退職をした日における給付算定基礎額の1/2に相当する額となります。
(6)遺族に対する一時金
1年以上の引き続く組合員期間を有する方が死亡した場合には、その者の遺族に次の区分に応じた金額の一時金が支給されます。
ア 退職年金の受給権者でない者
死亡した日における給付算定基礎額(組合員期間が10年に満たないときは、当該給付算定基礎額に1/2を乗じて得た額)の1/2に相当する額
イ 退職年金の受給権者であり、組合員でない者
死亡した日における有期退職年金の額に、有期年金現価率(※)を乗じた額
※ このときの有期年金現価率は、240月から有期退職年金の給付事由が生じた日の属する月の翌月からその者が死亡した日の属する月までの月数を控除した月数に応じた率となります。
ウ 退職年金の受給権者であり、組合員である場合
死亡した日において退職したものとして計算した有期退職年金算定基礎額
(7)組合員である間の退職年金の支給停止
終身退職年金の受給権者が再び組合員となったときは、組合員である間、終身退職年金の支給は停止されます。この終身退職年金の支給を停止されている者が退職した場合は、前後の組合員期間をもとに計算された終身退職年金を合算した額が終身退職年金となります。
また、有期退職年金の受給権者が再び組合員となったときは、組合員である間、有期退職年金は支給しません。この支給されていない有期退職年金の受給権者が退職した場合は、前後の組合員期間をもとに計算された有期退職年金を合算した額が有期退職年金となります。
(8)退職年金の受給権の消滅
退職年金は、その受給権者が死亡したときにその権利が消滅するほか、有期退職年金の場合は、以下の場合にも権利が消滅します。
ア 有期退職年金の支給期間が終了したとき
イ 有期退職年金に代わる一時金又は整理退職の場合の一時金の支給を請求したとき
3 公務障害年金
(1)公務障害年金の受給資格
公務障害年金は、組合員である間に初診日がある公務傷病により、障害認定日(その初診日から起算して1年6月を経過した日)において、障害等級が1級、2級または3級の状態にあるときに支給されます。この障害の程度は、国民年金及び厚生年金保険制度と同様です。
この障害認定日には障がい程度の要件に該当していない場合であっても、その日から65歳に達する日の前日までの間に該当するようになったときには「事後重症」の制度が適用されることにより支給されます。
また、障害等級に該当しない程度の障がいの方が、その後、組合員期間中に別の新たな公務傷病を負い、前後の傷病を併合して初めて障害等級に該当したときも、公務障害年金が支給されます。
(2)公務障害年金の額
ア 公務障害年金の額
公務障害年金の額は、公務障害年金の額の算定の基礎となるべき額(公務障害年金算定基礎額といいます。)を組合員又は組合員であった者の公務障害年金の受給権が発生した日の年齢(59歳未満のときは59歳)に応じた終身年金現価率で除した金額に調整率を乗じた額となります。
イ 公務障害年金算定基礎額
公務障害年金算定基礎額は、次の(ア)または(イ)の額をいいます。
(ア) 組合員期間が300月以下の場合
(イ) 組合員期間が300月を超える場合
※ 給付算定基礎額は、「退職年金」の受給権者である場合は、公務障害年金の給付事由が生じた日の終身退職年金算定基礎額(組合員期間が10年未満のときは、終身退職年金算定基礎額×2)に2を乗じて得た額となります。
ウ 調整率
調整率とは、各年度の国民年金法の改定率(以下「改定率」といいます。)を公務障害年金の給付事由が生じた日の属する年度における改定率で除した率をいいます。
(3)最低保障額
前記(2)により計算された公務障害年金の額が、その受給権者の障害等級の区分に応じ、下記の額より少ないときは、その額が公務障害年金の額となります。
障害等級1級 4,152,600円×改定率-厚生年金相当額(※)
障害等級2級 2,564,800円×改定率-厚生年金相当額(※)
障害等級3級 2,320,600円×改定率-厚生年金相当額(※)
※ 厚生年金相当額
最低保障額を算定する際の「厚生年金相当額」とは、公務障害年金の受給権者が受ける権利を有する次の給付のうち、最も高い額をいいます。
- ア 障害厚生年金の額(保険料納付要件を満たしていない場合は、これを満たしていると仮定した障害厚生年金の額)
- イ 老齢厚生年金の額
- ウ 遺族厚生年金の額(保険料納付要件を満たしていない場合は、これを満たしていると仮定した遺族厚生年金の額)
(4)障害の程度が変わった場合の公務障害年金の額の改定
公務障害年金の受給者の障がいが重くなった場合または軽くなった場合には、その障がいの程度の変更に応じて年金額を改定します。
また、障害等級に該当する程度の障がいの状態に該当しなくなった場合は、その障がいの状態に該当しない間、その支給が停止されます。
(5)組合員である間の公務障害年金の支給の停止
公務障害年金の受給権者が組合員であるときは、組合員である間、公務障害年金の支給は停止されます。
(6)公務障害年金の受給権の消滅
公務障害年金の受給者が次のいずれかに該当することとなったときは、その権利がなくなります。
ア 死亡したとき
イ 障害等級のいずれにも該当しなくなった日からその状態のまま3年を経過し、かつ65歳に達したとき
4 公務遺族年金
(1)公務遺族年金の受給資格
公務遺族年金は、次のいずれかに該当するときに、遺族(※1)に支給されます。
- ア 組合員が公務傷病により死亡したとき
- イ 組合員であった者が、退職後に、組合員であった間に初診日がある公務傷病により、初診日から起算して5年を経過する日の前に死亡したとき(※2)。
- ウ 障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にある公務障害年金の受給権者が、公務障害年金の給付事由となった傷病により死亡したとき(※3)。
※1 遺族の範囲は、厚生年金保険制度と同様となります。
※2 1年以上の引き続く組合員期間があり、かつ、老齢基礎年金の受給資格期間を満たす方が公務により死亡した場合は、初診日から5年以上経過していても公務遺族年金が支給されます。
※3 1年以上の引き続く組合員期間があり、かつ、老齢基礎年金の受給資格期間を満たす方が公務により死亡した場合は、障害等級が3級であっても公務遺族年金が支給されます。
(2)公務遺族年金の額
ア 公務遺族年金の額
公務遺族年金の額は、公務遺族年金の額の算定の基礎となるべき額(公務遺族年金算定基礎額といいます。)を組合員又は組合員であった者の死亡日における年齢(59歳未満のときは59歳)に応じた終身年金現価率で除した額に調整率を乗じた額となります。
イ 公務遺族年金算定基礎額
公務遺族年金算定基礎額は、次の(ア)または(イ)の額をいいます。
(ア) 組合員期間が300月未満の場合
(イ) 組合員期間が300月以上の場合
※ 給付算定基礎額は、死亡者が退職年金の受給権者であった場合は、死亡した日の終身退職年金算定基礎額(組合員期間が10年未満のときは、終身退職年金算定基礎額×2)に2を乗じた額となります。
ウ 調整率
調整率とは、各年度の国民年金法の改定率を公務遺族年金の給付事由が生じた日の属する年度における改定率で除した率をいいます。
(3)最低保障額
前記(2)により計算された公務遺族年金の額が、下記の額より少ないときは、その額が公務遺族年金の額となります。
1,038,100円×改定率-厚生年金相当額(※)
※ 厚生年金相当額
最低保障額を算定する際の「厚生年金相当額」とは、公務遺族年金の受給権者が受ける権利を有する次の給付のうち、最も高い額をいいます。
- ア 遺族厚生年金の額(保険料納付要件を満たしていない場合は、これを満たしていると仮定した遺族厚生年金の額)
- イ 老齢厚生年金の額
- ウ 障害厚生年金の額(保険料納付要件を満たしていない場合は、これを満たしていると仮定した障害厚生年金の額)
(4)公務遺族年金の支給停止
公務遺族年金の受給者が次の場合は、公務遺族年金の支給が停止されます。
- ア 夫、父母又は祖父母の場合
60歳に達するまでは支給は停止されますが、夫に対する公務遺族年金については、夫が同時に遺族基礎年金を受けられるときは支給されます。 - イ 配偶者および子の場合
子に対する支給は停止し、配偶者に支給します。
(5)公務遺族年金の受給権の消滅
公務遺族年金の受給者が次のいずれかに該当したときは、その権利がなくなります。
- ア 死亡したとき
- イ 婚姻をしたとき(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあるものとなったときを含みます。)
- ウ 直系血族及び直系姻族以外の養子(届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含みます。)となったとき
- エ 子または孫である場合は、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき(障害等級が1級または2級に該当する障がいの状態にある場合を除きます。)
- オ 18歳以上で障害等級が1級または2級に該当する障がいの状態にある子または孫である場合は、20歳に到達したときまたは20歳前にその事情がなくなったとき